○駿東伊豆消防組合火災調査事務処理要領

平成28年4月1日

消防本部訓令甲第14号

(趣旨)

第1 この要領は、駿東伊豆消防組合火災調査規程(平成28年駿東伊豆消防組合消防本部訓令甲第13号。以下「規程」という。)に規定する事務の処理に関し必要な事項を定めるものとする。

(火災原因調査及び火災損害調査)

第2 規程第3条に規定する火災原因調査及び火災損害調査とは、次のものをいう。

(1) 火災原因調査

ア 出火原因 出火箇所、発火源、経過及び着火物

イ 火災の性状 煙の流動状況、延焼経路及び延焼拡大の要因

ウ 火災初期の対応 発見状況、通報状況及び消火状況その他火災発生から避難し、又は死傷するまでの間における関係のある者の行動等

エ 避難状況 火災現場における避難者、要救助者の行動及び救出救助状況等

オ 消防用設備等の使用状況 消火設備、警報設備及び避難設備等の作動及び使用状況

カ その他消防行政上必要な事項

(2) 火災損害調査

ア 焼き損害 火災によって焼けた物及び熱によって破損した物等の損害

イ 消火損害 消火活動によって受けた水損、破損、汚損等の損害

ウ 爆発損害 爆発現象の破壊作用により受けた物等の損害であって、焼き損害及び消火損害以外のもの

エ 死傷者 火災に起因して生じた死者及び負傷者の数、負傷程度及び発生状況

オ その他人的被害状況 り災世帯数及びり災程度並びにり災人員等

(調査体制)

第3 調査員は、消防長及び消防署長(第14において「消防長等」という。)が指名した者とする。

2 調査の主務者(出火原因の究明及び火災調査書類の作成の責任者をいう。以下「調査主務者」という。)は、管轄の消防司令補以上の者を充てる。ただし、消防司令補以上の者が不在の場合は、この限りでない。

3 調査主務者は、事後の調査を要すると認めたときは、予防課と協議するものとする。

(調査書類作成者)

第4 規程第9条第10条第14条及び第19条に規定する次に掲げる文書は、それぞれ次に定める者が作成する。ただし、第3の3の規定により、予防課職員が調査を行う場合は、当該予防課職員が必要に応じて次の(1)から(7)までの書類を作成するものとする。

(1) 実況見分調書 調査主務者又は次席の者

(2) 火災原因判定書 調査主務者

(3) 火災現場記録写真、火災現場図面等 調査主務者が指名した者

(4) 質問調書 調査主務者が指名した者

(5) 損害調査書 調査主務者が指名した者

(6) 鑑識見分調書 調査主務者が指名した者

(7) 燃焼実験調書 調査主務者が指名した者

2 先着隊の隊長は、規程第8条に規定する出動見分調書を作成する。ただし、必要に応じ、他の隊の隊長においてもこれを作成し、作成した書類は、上記の報告書類に添付し報告するものとする。

(調査書類の内容)

第5 出動見分調書

(1) 出動途上における見分

出動の経緯及び出動から水利部署するまでの間にどの地点で、いつ、どの方向に、どのような異常が見られたか、また、異常が見られない場合はその旨を記載する。

(2) 到着時の見分

到着時に、何がどの範囲で燃えているか、燃えていないのはどの範囲か等現場の建物や人及び燃焼物の様子について、位置、構造、面積、用途等を具体的に記載する。この場合、図面を作成し、見分位置や方向を記入することが望ましい。

(3) 防ぎょ中の見分

火災がどのように延焼拡大し、どのように防ぎょし、鎮火に至ったか等火災の経過について、また、異常な燃焼が見られたか、出入口の施錠や窓の状態はどうだったか等について記録する。見分時は、その位置や方向を明確にし、順序よく記載する。

第6 実況見分調書

実況見分調書は、証拠の保全を目的として作成する。見分が終了し火災現場が整理された後は、再見分が不可能となるため、綿密に調査し記録する。書類作成に当たっては、事実のみを記録し、憶測や推理、直感に頼った調査をしないこと。

(1) 現場の位置及び付近の状況

現場はどのような地域か、建物の周囲及び付近の地理水利の状況はどうか、消防活動上の状況はどうか等を記述する。ただし、他の書類に同様の記載がある場合はその旨を記載し、省略することができる。

(2) 現場の模様

誰の所有する、何がどの位置から見て、どのような状態で、焼けの状況はどうであったか等、火災現場全体の概要を記述する。

(3) 焼損状況

出火原因の判定に必要な焼損状況を記載する。焼け止まっている周辺部分から現場を大まかに捉え、中心部分は、詳細に、かつ、順序よく記述する。見分や発掘を行った位置を明確にし、見分した物件の色、形状、状態及び計測した炭化深度などを記録する。

第7 火災現場記録写真

証拠資料の保存は、物品そのものよりも写真撮影によることが多いため、火災現場の写真は、写し漏れのないよう確実に実施する。まず現場全体が把握できるよう外周を四方から撮影し、続いて焼けの見られる物件、場所を各方向から撮影する。その後は見分者の指示に従い、原因判定に関わる部分を撮影し保存を行う。

第8 火災現場図面

現場の図面は、現場案内図、建物配置図、建物平面図、現場見取図、現場詳細図等を必要に応じて作成する。この場合、北を上に、縮尺は正しく、誰が見ても分かりやすく描くこととし、図面右上に作成者の所属、階級及び氏名を必ず記入する。

第9 火災原因判定書

火災がどのような原因で発生し、どのように拡大したかを判定する。その際、各調書、写真、図面等の証拠資料に基づいて判定書を作成する。

(1) 火災の概要

火災のアウトラインとして、現場の位置や付近の状況、り災状況、出火建物の概要等を記載する。ただし、他の添付書類に同様の記述がある場合は、その旨を記載し、省略することができる。

(2) 出火箇所判定

どこから出火したかについて判定をする。複数棟延焼した建物火災の場合は、出火建物の判定をし、続いて出火箇所の判定をする。

(3) 火災原因判定及び結論

原因となる可能性のあるものは全て列記し、立証又は反証を原則として判定する。その際、実況見分調書、質問調書及び出動見分調書を活用する。

(4) 参考事項

特異火災や大規模火災等にあってはその経過を、法令違法があった場合はその事実を、また、過去における火災例や事後に対する注意等を記載する。

2 判定に際し使用する用語は、次のとおりとする。

(1) 断定 調査書類、判定資料等に基づき、原因が明らかで少しの推定も要さず原因を決定できる場合

(2) 判定 調査書類、判定資料等に基づき判断し、他に原因はあり得ないと思われる場合

(3) 推定 調査書類、判定資料等に基づき考察した結果、原因を推定できる場合

(4) 不明 原因を判定する資料がない、又は判定資料が乏しく、推理又は考慮によっても原因を明らかにできない場合

第10 質問調書

次に掲げる関係者に、それぞれ次に定める火災原因の究明に関連する事項を質問し、記録する。

(1) 出火行為者 出火に至った状況について

(2) 火元責任者 出火場所には何があったか、状態はどうだったか等について

(3) 発見者及び通報者 発見時の状況及び通報までの間の状況について

(4) 初期消火者 消火時の状況、消火行動に至った経過等について

(5) その他の関係者 出火に至った経過や理由及び損害に関する事項

2 記録した内容については、関係者に読み聞かせ、誤りのないことを確認する。

3 18歳未満の者又は精神障害者、聴覚言語障害者等に対して質問をする場合は、原則として、立会人をおいて行うこと。

4 外国人に対して質問をする場合は、努めて通訳の介助を得て行うこと。

第11 損害調査書

(1) 損害調査は、燃焼物件のみに着目することなく、類焼、類損等、周囲の状況にも注意し実施する。損害額の算定に当たっては、必要に応じ参考書類を添付する。また、り災損害届出書の記載内容により損害状況が把握できる場合は、その旨を記載し、損害調査書に引用することができる。

(2) り災者等から、り災についての証明請求があった場合は、損害調査書等に基づき、り災証明書を交付しなければならない。り災証明書の交付は、所定の手続によって行う。

(現場保存)

第12 規程第17条第1項の現場保存を行うときは、ロープ及び立入禁止礼を使用し、速やかに保存区域を設定する。設定区域内には監視員を配置し、関係のない者をみだりに出入りさせてはならない。やむを得ず消防隊員が設定区域を離れる場合は、所有者等に教示するなど、できる限りの保存を行う。

(火災概況即報)

第13 規程第18条の火災概況即報は、原則として火災が発生した日に、夜間の火災等即日報告ができない場合は、翌朝報告するものとする。

(調査書類の作成)

第14 規程第19条に規定する調査書類の作成に当たり、火災をその程度及び種別に応じて別表に定める基準により1号処理から3号処理までに区分する。ただし、消防署長が必要と認める火災については、上位の区分への変更(1号処理の区分に該当する火災を2号処理又は3号処理の区分に、2号処理の区分に該当する火災を3号処理の区分に変更することをいう。)をすることができる。

2 1号処理の区分に該当する火災については、火災原因判定書、実況見分調書及び出動見分調書の作成を省略することができる。

3 2号処理の区分に該当する火災については、実況見分調書、出動見分調書及び火災現場記録写真を火災原因判定書に併合することができる。

(報告書の提出)

第15 規程第19条の規定による報告書の提出は、原則として、次の各号に掲げる処理区分に応じ、火災の発生した日から起算して当該各号に定める期間内に行わなければならない。ただし、当該期間内に提出できない場合は、調査主務者は、予防課と協議する。

(1) 1号処理又は2号処理 30日

(2) 3号処理 60日

この訓令は、平成28年4月1日から施行する。

(令和4年3月30日消本訓令甲第1号)

この訓令は、令和4年4月1日から施行する。

別表(第14関係)

火災調査書類作成基準

区分

基準

1号処理

林野火災及びその他の火災で次のいずれにも該当するもの

(1) 焼損面積100m2未満のもの

(2) 火災により死傷者が発生していないもの

(3) 損害額が1万円以下のもの

(4) 鑑識見分・鑑定を行う必要のないもの

2号処理

1 火災種別及び焼損程度が次のいずれかに該当するもの

(1) 建物火災で焼損面積が10m2未満のもの

(2) 林野火災で焼損面積が100m2以上50a未満のもの

(3) 車両・船舶火災で1台焼損程度のもの

(4) その他の火災で、1号処理に該当しないもの

2 上記1に該当する火災で、かつ、次のいずれにも該当しないもの

(1) 事後に問題を残し、訴訟等に発展するおそれのあるもの

(2) 死者の発生した火災

(3) 製造物の欠陥により出火した火災

(4) 消防行政上対策を講ずる必要のある火災

(5) 社会的影響の大きい火災

3号処理

1号処理及び2号処理に該当しない火災

駿東伊豆消防組合火災調査事務処理要領

平成28年4月1日 消防本部訓令甲第14号

(令和4年4月1日施行)

体系情報
第7編 務/第2章 火災予防
沿革情報
平成28年4月1日 消防本部訓令甲第14号
令和4年3月30日 消防本部訓令甲第1号